先輩移住者インタビュー
interview
「お米」から始める、町の未来。
杵つき精米所で繋ぐコミュニティ。
湯前町
2022年にUターン 深水翔平さん

奥球磨の豊かな自然に囲まれた湯前町。この町で、一風変わった「精米」に情熱を注ぐ一人の男性が。
湯前町出身の深水翔平さんは、昔ながらの「杵つき精米」という手法を守りながら、お米や農業を通じて町の新しい未来を描こうとしています。
今回は深水さんがなぜ精米の道を選び、そして湯前町でどんな“種”をまこうとしているのか、その想いをお聞きしました。

杵つき精米機で精米されたお米
杵つき精米所の運営
深水さんは高校卒業後、東京の大学へ進学。卒業後は熊本へ戻ってはきたものの、阿蘇と湯前町での二拠点生活を送っていました。
しかし、転機が訪れます。湯前町で精米所の指定管理を行うことになったご実家から、「人手が足りない」と相談を受けたのです。「正直、流れでこうなった部分も大きいんです」と深水さんは笑いますが、このことがきっかけで深水さんは故郷湯前町に戻ります。
深水さんが手掛けるのは、現代では珍しくなった「杵つき精米」。
一般的なコイン精米機は米を削る際に摩擦熱が発生してしまいますが、杵つき精米は米同士をすり合わせるため、熱が発生しません。
深水さん「熱を加えないことで、お米本来の旨味や、栄養たっぷりの『アリューロン層(糊粉層)』を残せるんです」。
深水さんの言葉には、日々の試行錯誤で培った精米の知識と、お米への深いリスペクトが込められています。
家族を手伝うために始めた精米所の運営。そこには深水さんにしかできない「こだわり」が詰まっていました。

杵つき精米機で精米中の米
都会でできることは、田舎でもできる。でも「逆」はできない。
深水さんとお話ししていて、ハッとさせられた言葉があります。
深水さん「都会でしかできないことって、実は今の時代、田舎でも大抵できるんですよね。
買い物ならネットがあるし、エンタメならNetflixやYouTubeがある。都会にしかない「尖ったもの」が見たければ、たまに旅行へ行けばいい。」
流通やネット環境が整備されているからこそ、“田舎でも”できることが増えてきた一方で、“田舎でしかできない体験”に注目したいと深水さんは語ります。
深水さん「山や川で何かをしたり、土に触れて農業をしたり、狩猟をしたり。都会の人がお金を払って体験しに来るのは、そういう『田舎にしかない環境』なんです」
田舎は都会より劣っていると思い込まずに、田舎にしかない“特別なもの”に目を向ける。深水さんは、田舎の持つ可能性を誰よりも信じていると言います。

5月下旬から始まる田植えに向け育つ米の苗
「何もない」からこそ、探す楽しみを。湯前町での今後の展望
深水さん「自分は湯前町が好きなんですよね。だからこそ、ここで働けることを誇りに思ってますし、地域のみんなと一緒にこの町での仕事を大事にしながらやっていけたら嬉しいなって。」
町で働く人たちが、自分たちの仕事の価値を再発見し、生き生きと活動できる。そんな「意識改革」こそが、町の活性化に繋がると語ってくれました。また深水さんが今、大切にされているのが、フランスの農業にある「テロワール」という考え方。深水さんはこの考え方を杵つき精米所を通して広げていきたいと考えています。
深水さん「フランスの農作物は育った土地で価値が決まるんです。杵つき精米所を通してこの土地の良さを証明して、テロワールの考え方を広めていきたいんです。」
土地そのものが価値を持つ。この考え方は、巡り巡ってこの町の価値を底上げすることにも繋がると深水さんは言います。
深水さん「地元の友達はよく『ここには何もない』って言うんです。でも、それはただ探そうとしていないだけ。ポテンシャルは、実はたくさん眠っているんです」
深水さんは、そのポテンシャルを掘り起こし、町の人たちと一緒に新しい価値を作っていきたいと考えているそうです。

今後の展望を語る深水さん
終わりに
「お米」という、私たちの生活に欠かせないものから、町の未来を語る深水さん。
彼の活動は、一見すると小さな精米所の光ですが、その光は町全体を輝かせる、そうした未来を感じます。
伝統を大切にしながら、新しい風を吹き込む。深水さんがまいた「種」が、湯前町でどのように芽吹き、育っていくのか。
これからの活動に目が離せません。

杵つき精米機と深水さん









