ひとくま暮らしナビ

先輩移住者インタビュー

interview

「待ってるで」に込められた、
湯前町への深い愛情

湯前町

2015年兵庫県から移住 安井佳奈さん

安井佳奈さん

兵庫から湯前へ。安井佳奈さんが見つけた“心の居場所”

「なんで見ず知らずの私に挨拶してくれるんだろうって、すごく不思議に思ったんです」 そう語るのは、兵庫県出身で湯前町に移住して今年で 11 年目を迎える安井佳奈さん。地域おこし協力隊としての活動を経て、現在は湯前町役場で勤務されています。ある出来事をきっかけに湯前町での暮らしへとつながっていった安井さんの、これまでの歩みと、この町で 感じている温かさについて伺いました。 

笑顔でインタビューに答える安井さん

 

移住のきっかけは、見知らぬ人からの「こんにちは」  

安井さんが湯前町と出会ったのは、大学時代。柔道部の合宿で毎年この町を訪れていました。 安井さんは当時を振り返り、「湯前町出身の OB の方がいて、その繋がりで毎年合宿に来て ました。来るたびに良いところだなと思っていたんですが、ただ移住とかまでは考えていな くて」と話します。当時はあくまで合宿で訪れる場所の一つであり、まさか将来自分が暮らすことになるとは思ってもいなかったそうです。 

そんな中で、安井さんの心に強く残る出来事がありました。大学 3 回生の春、怪我のリハビリで人吉に通っていた時のこと。宿泊施設から湯前駅まで一人で歩いている途中でした。 「全然顔も知らないおばあちゃんが、道の反対側からこんにちはーって私に挨拶してくれ て。それに衝撃を受けて!!」 

安井さんがその時のことを語る様子からは、当時の驚きと感動が今でも鮮明に伝わってき ます。見知らぬ人同士でも自然に言葉を交わす光景は、それまでの安井さんの生活では当た り前ではなかったと言います。この温かい交流が、安井さんにとって移住という選択肢を意 識する大きなきっかけとなりました。

 

 

「全部が新鮮」だった、移住初期のリアルな体験  

大学卒業後、安井さんは地域おこし協力隊として湯前町へ移住します。都会での生活とは異なる環境に、当初は戸惑いもあったようです。 

「最初は原付を持っていこうと思ってたんです笑笑。でも知り合いにマクドまで 30 ㎞ある んやぞって言われて、すぐに原付置いていくわって笑」 

このエピソードは、地方での生活における移動手段の重要性を安井さんが実感した瞬間でした。また、これまで当たり前だった環境との違いにも直面します。 

安井さんは、「(行きたい店が近場にないことが判明したときに)あんなに店であふれたとこ ろに住んでいたんだって」と、都会の利便性とのギャップに驚いたと言います。すぐに手に 入らないもの、不便に感じること。そうした一つひとつに直面しながら、安井さんは湯前町 での暮らしの変化を肌で感じていきました。

 

協力隊時代、ドローンの試運転を行っている様子 

 

日常の中で育まれた、地域との温かい関係性  

協力隊としての活動では、広報やスポーツ指導員、高齢者支援など幅広い分野に携わりました。その中で、地域の人々との温かい交流が安井さんの支えとなっていきます。 「(協力隊時代の高齢者支援で)お宅訪問や公民館に行ったりしてたんですけど、その時のことを覚えてくれていて。で、広報で行ったときに佳奈ちゃーん!みたいに声をかけて貰えて。それも人の温かさですよね」 

活動を通じて関わった人々とのご縁は、協力隊の任期を終えた後も続いています。安井さんは「協力隊の時から、地域の方々の温かさを日々感じています。『野菜をもらったよ』『タケノコが採れたよ』と差し入れをいただくことも多く、そのお心遣いに本当に感謝しています」と笑顔で語ります。こうしたやり取りは、湯前町では特別なことではなく、日常の中で自然に行われて いるものです。そうした日常の交流の中に受け入れられ、関わっていくことで、安井さんは 地域との距離を縮め、深い関係を築いていきました。 

 

協力隊の同期や町民の方との YouTube 配信

 

「ここにいたい」と強く思えた理由  

協力隊の任期を終えた後も、安井さんは湯前町に残ることを選びました。その背景には、町 への貢献と、町民との温かい繋がりがありました。 

「(協力隊卒隊後)湯前町に貢献じゃないですけど、湯前町にもっとおりたいなと思ったら 役場かなって。町民と距離も近いし」 

協力隊として活動する中で培われた町民との距離の近さや、日々顔を合わせる中で生まれ た関係性が、「この町で関わり続けたい」という安井さんの思いを形にしていったのかもし れません。 

安井さんは、「自分で起業しようという気はなかったんですよ。どちらかというと町に寄り添って何かをしたいっていう方が強かったので。だったら役場に入って、町民の人に気軽に話してもらえる存在になりたいなと思って」と、役場職員という道を選んだ理由を語ります。 日々の仕事の中でも、人との距離の近さを感じながら働いている様子が伝わってきます。 現在は広報担当として、さらに幅広い年齢層の人々と交流する機会が増えました。 

「広報担当になって、(今まで以上に)幅広い年齢層の方と交流するようになって、地域の人と関わるのってすごく楽しいなって。頑張ってねーとか言われるのがすごい嬉しくて、こんなに力になるんやって」 

日々のやり取りの中で生まれる温かい言葉が、安井さんの仕事の大きな支えとなっているようです。 

 

安井さんが担当している湯前町の広報誌

 

湯前町で待つ、安井さんの「待ってるで」  

最後に、移住を考えている人へのメッセージを尋ねると、安井さんはいつもの飾らない調子 でこう答えました。

「待ってるで」 

このシンプルながらも力強い一言には、安井さんが湯前町で築き上げてきた暮らしと、この町への深い愛情が込められています。どんな暮らしが待っているのか、どんな人たちがいるのか。それは実際に湯前町を訪れ、地域の人々と関わってみる中で初めて見えてくるものなのかもしれません。その時、安井さんの「待ってるで」という言葉の本当の意味が、きっと自然と心に響くことでしょう。